『首無しライダー』
これは当劇団の団長に聞いた話である。
もう何年前になるだろうか?ある夜、一人の青年が夜の田舎道に車を走らせていた。その道は普段から人気の無い通りであり、更に夕方から降る激しい雨のせいもあり、誰もいなかった。ただ何となく奇妙な気配がしていた。暫く走ると、急にFMラジオの入りが悪くなってきた。
「・・・普段ならこんな事は無いのに・・・。」
そうそう思いながら青年はカーステレオをラジオからテープに変えた。曲はオールデイズの中でも特に雨降りの日に聞きたくなるお気に入りのモノだ。そのその曲が調度サビの部分に入った時、横の脇道から急に単車が割り込んで来た。その単車はもの凄いスピードで走り、暫くするとまた脇道に消えていった。
「何だ、今の?あんなスピードじゃ危ねぇぞ?」
そう思いながらも車を走らせ、調度単車が入り込んだ脇道を横切った時、その単車が今度は車の後ろに戻って来た。
「道、間違えたのか?」
そう思ったが、少し変だ。青年の帰り道は、その辺りでも特に人通りの無い道を走っていかなくてはならず、その道を使う事自体が変であるし、何よりも車との距離が常に一定に保っている。少し気味が悪いな、と思っていると、突然単車がパッシングをしてきた。しかし、スピードを出すワケでもない単車。知り合いか、と思いルームミラーを覗く。最初は気付かなかったが少し変だ。黒の皮手袋に黒のライダースーツ。・・・でも・・・そうだ、そこにはあるはずのモノがない。ヘルメットどころか頭自体が無いのだ。
「うわー!!」
車内で絶叫し、青年はアクセルを思いっきり踏んだ。車のスピードメーターはすぐに140キロ近くまであがった。しかし首無しライダーもすぐにスピードを合わせてくる。暫くすると十字路に差し掛かった。青年は家に急ごうとウィンカーを右に出して右に曲がる。首無しライダーも右に曲がる。その時、首のあるはずの部分からおびだだしい血が流れ飛ぶ。青年は更にスピードをあげ、次の十字路にさしかかり、ウィンカーを左に出し、左に曲がった。あまりのスピードに車の後ろが横に流れる。が、たいして運転がうまいワケではないが、咄嗟のハンドルワークで持ちこたえた。首無しライダーはというと更にスピードをあげて迫ってくる。すぐに車との距離を縮め、車の後ろにビタっとくっつき、リアバンバーに前輪をぶつけている。
「このままじゃ駄目だ。」
と思い、更にスピードをあげるが、それでも首無しライダーはピッタリとくっついている。そして青年が家に着く為の最後の十字路に差し掛かった。いつもの習慣で右のウィンカーを出し、右に曲がろうかと思った時に、青年の脳裏にある思いが過ぎった。右に曲がる道というのはとても狭く、左右をコンクリートの壁で覆われている。普段でも徐行をして精一杯の道をこのスピードのまま曲がれるだろうか?そして男は咄嗟にハンドルを左に切った。しかしそこで問題が起きた。車のウィンカー同様、右に曲がる為にハンドルを切って上体を右に倒していた首無しライダーは、左に曲がってしまった青年を追おうと、無理矢理左に曲がろうとした為、バランスを崩してしまって倒れてしまったのだ。・・・皆さんも人を追う時は、相手が曲がったのを確認した上で曲がりましょう。
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